新人に贈る三つの言葉

―2018年度入社式にあたって―

2018年4月1日
宮島醤油株式会社
代表取締役社長 宮島清一


 厳しかった冬が去り、満開の桜が咲き誇るなか、私たちは新しい仲間を迎えます。13名の皆さんが、難しい試験を突破して見事に入社を勝ち取られました。心よりお祝い申し上げます。

 世界を見ると国家間の対立が目立ち、我が国では高齢化と人口減少が問題です。現代の社会には解決すべき問題、克服すべき課題が山積しており、私たちは様々な試行錯誤のただなかにあります。豊かで安全で持続可能な社会を次世代に引き継ぐために、どんな産業を育てるべきか、どんな地域社会を築くべきか、その中で食品企業にできることは何か、若い皆さんの知恵と力を振り絞って、創造的な課題にどしどし取り組んでほしいと思います。

 今日は入社式なので、宮島醤油の一員として生きて行くために身につけるべき、根本精神についてお話します。それは三つの言葉で表されています。

1.去華就実


 第一は「去華就実(きょかしゅうじつ)」という言葉です。皆さんは、社内のあちこちにこの言葉が掲げられていることに気づくでしょう。これは唐津藩の藩主後継者であった小笠原長生(ながなり)さんが書いて、弊社の創業者である七世宮島傳兵衞に贈られたものです。長生さんは宮中顧問官として、また華族軍人として、昭和天皇の皇太子時代の教育係をされるなど、明治から昭和にかけて教育、文化、軍事の面で活躍された方です。この言葉は、「華やかなこと、表面的なことを捨てよ。実質あることに専念せよ」ということを教えています。

 宮島醤油の事業は明治15年の創業以来、今年で136年になります。老舗企業と呼ばれるまでに事業が続いているのは、私たちがこの「去華就実」を社是と定め、全社員が身につけるべき根本精神として大切にしてきたからです。華やかな仕事や暮らしにあこがれたり、さほどの努力なしに短期的に大きな利益を上げることを追い求める風潮は、いつの時代にもあります。そうしたことを厳しく戒めるのが宮島の精神です。それは宮島で働く社員の気風として、皆さんが身につけなくてはならないものです。

2.技術立社


 第二は「技術立社」です。私たちの国家を支えるもの、国の実質的な力の源泉は、「新しいものを生み出す産業の力」、つまり製造業の力量にあります。特にわが国のように国土の狭い、地下資源の乏しい国が世界の人々から尊敬される立派な国であるためには、世界最高の技術を持った製造業を育てることが最も大切です。宮島醤油は新しい技術の開発を常に経営課題とした掲げ、努力を続けます。

3.食文化に貢献する気概


 宮島醤油は130年以上続いている古い会社で、しかも日本の伝統的な食に関わっていますので、伝統を大切にします。しかし、人々の食生活や文化は変わります。日々生まれ変わる食文化にしっかり呼応し、常に先進的な会社であるためには、新しい食文化に貢献する気概、元気が必要です。

 人間には様々な創造活動の歓びがあります。音楽を演奏する、スポーツの技を磨く、生き物や子どもを育てる、こうした創造活動と同じように、優れた工業製品を生み出す仕事には、「ものをつくる」という人間の本源的な喜びと感動があります。そして芸術、スポーツ、学問の世界と同じように、何かを実現する喜びの裏には、そこに至るまでのたゆまぬ努力と苦心惨憺の物語があります。私たちは、こうした苦労と喜びを分かち合う仲間として、新入社員の皆さんを迎えたいと思います。一緒にがんばりましょう!