走らんか副社長
【日光御成道 南行】

番外編 練習の日々 柏・流山

走る予定にしていた日があまりの猛暑だったために、今月の日光御成街道走りは断念してしまった。いやはやなんとも情けなく、申し訳ない。しかし、練習を怠っているわけではないぞ。地元の道をくまなく走っていると、普通に生活していては気付くことのない、自然や歴史や文化を発見できる。今回は、そんな近所の観光名所(と私だけが思っている所)を紹介させていただこう(ということでお茶を濁そう)。


柏市にある、柏の葉公園のはずれにある調整池では、こんな不思議な植物の姿が見られる。地中からにょきにょきと、こぶのような、きのこのお化けのような、固いたけのこのような不気味なものが生えている。

調べたところ、これは呼吸根というもので、水辺に生えた樹木の根が、ガス交換をするために発達したものだとわかった。そうか、植物の根は呼吸をするのだ。植物の立場で考えてみると、水辺に生えて根を張っておれば、水不足で枯れる心配は少ないが、逆に水分が多すぎて根腐れを起こす危険がある。そこで、根の一部を地上に伸ばし、例えて言えば、水中に潜った忍者がおぼれないように竹の筒を水面に出して息つぎをするように、地上の空気を吸う知恵を働かせたのであった。植物の能力を馬鹿にしてはいけない。環境に適合して生きるために、考えながら進化しているのだ。


流山はみりんの産地、そして隣は醤油の産地である野田なので、それらの産業の歴史が感じられる跡がある。初めて走る裏道に入って、民家のこの塀に出会った時は、へぇ~と驚いて転びそうになった。いや、ほんとに。

このお宅の先祖はみりんに関わる仕事をされていたのだろう。みりんを輸送・保存するために使われた甕(かめ)を積み重ねて塀を作っておられる。これほどの数の甕が並んでいるのはすばらしい、まことに壮観な産業遺産だ。


日光と江戸を結ぶ街道沿いでよく見かける青面金剛(しょうめんこんごう)の石像は、九州ではどうだかわからないが、関東では気をつけていると自宅近辺にもあちこちに存在している。あらためて紹介すると、手が6本(4本や2本のものもあるらしい)の金剛が邪鬼を踏みつけている像で、その下には3匹の猿、三猿が彫られているものだ。

その三猿なのだが、常磐自動道流山インター近くにあるこの像は、なんとも女性らしい姿で色っぽい。こんなかっこうでは、とても「見ざる、言わざる、聞かざる」などとはいえない。あえて表現するならば、「見ちゃいられませんわ、誰にも言いませんからね、聞かなかったことにいたしますぅ」だ。


そもそも、こういう石碑や像は、時の流れから取り残されたように、道端にひっそりと寂しくたたずんでいるもので、だからこそ魅かれるものがあるのだが、この石碑はまことににぎやかである。片方だけの靴やら犬の置物やら貯金箱やら、その他もろもろのがらくた、いや失礼、お供え物がこれでもかとばかりに捨てられ、いや失礼、飾られており、金剛様もさぞや迷惑、いや失礼、喜んでおられることだろう。これはまさに、ご近所の家庭で不用になった物の置き場、いや失礼、住民のこの像に対する厚い信仰心のあらわれと言うべきだろう。


今回は街道を走るレポートをさぼってしまったが、猛暑の中を走るのは実はけっして嫌いではない。体の中から熱気が吹き出し、全身から汗が日光華厳の滝のように流れる(それほどではない)のは、自虐的快感である。熱中症には十分注意しなければならないのだが、昨夏ふと、猛暑の中を走った時には、体温はいったいどれくらいになっているのだろうか、と疑問に思って確かめてみた。
 気温が30度以上ある炎天下に、もちろん水分を十分に補給しながら長距離を走り、自宅に戻ったところですぐに体温を測ってみた。ひょっとして40度近くあるのではないか、と興味しんしんだったのだが、残念ながら?36度台の平熱であった。考えてみれば、体温が異常に上がれば、それすなわち熱中症なのであって、適切に水分と塩分を摂取しておれば安全なのである。でも、あぶないので、よい子はぜったいに真似してはいけません。

2013年7月

今回の走らんかスポット