走らんか副社長
【番外編(連載113回)】

自粛中 海の生物続き

4.貝類の代表 ホンビノス貝

ホンビノス貝といっても知らない人、食べたことのない人がほとんどだろう。そもそもは北米大陸に生息している貝だが、船に乗って、ではなく船にくっついて東京湾に来たら日本が気に入ったらしく、そのまま居付いてしまった二枚貝だ。千葉県内のスーパーでは10年ほど前から見かけるようになり、大きさはハマグリと同じかそれより大きく、味はアサリよりも濃い。そして、そこそこ安価だ。

ホンビノスという聞き慣れない名前なのだが、ビノス(venus)とはビーナスのこと。桃から生まれたのは桃太郎、ビノスから生まれたのがビーナスだ。

産地の船橋市ではホンビノス貝を使った料理イベント、日本クラムチャウダー選手権が開催されている。クラムチャウダーにはアサリを使うのが一般的だが、ホンビノスを使ったチャウダーはちょっと味がちゃうだー、というくらいおいしそうだ。


5.魚類の代表 サバ(鯖)

博多や唐津の居酒屋には“ごまさば”というメニューがある。ゴマサバという種類の魚のことではなく、サバの刺身をすりゴマと醤油に漬けたもので、これがうまいのうまくないのって、“ごまさば”を食べずしてサバ料理のレシピを語ってほしくない、と言いたくなるほどのものだ。

サバ料理は煮付け(醤油ではなく味噌煮に限る)か塩焼きが一般的で、刺身は敬遠されている。それは、サバは足が速い(傷みやすい)ことに加えて、寄生虫アニサキスが潜んでいる恐れがあるからだ。そこで、その不安を解消すべく、イカに続く唐津の特産物として現在売出し中なのが、唐津市と九州大学の共同研究による“唐津Qサバ”だ。卵からの完全養殖に成功したもので、アニサキスの心配がまずない。サバの刺身を一切れ口にしたら最後、寄生虫が胃壁を食い破って体内を這い回り、激痛にのたうちまわる・・・。ということがないそうだ。

魚類の繁殖の特徴は、卵や幼魚のうちにほとんどが他の生物に食べられることを見越して、大量の卵を産むこと。サバも一度に数十万粒の卵を産むらしいのだが、そのうちのほんの数匹しか成魚にならない。そして、この厳しい生存競争を生き残ったサバは、勝ち誇ったように偉そうな態度をとることが分かっている。この生態を生物学の用語で“鯖威張る”(survival)と言う。

“さばを読む”という言葉はサバから生まれている(諸説あります)。カツオやマグロのような大型魚は一匹いくら、で取引されるが、サバくらいの大きさになると箱単位で売買される。箱の中のサバを一匹二匹・・・と数えていては、時間がかかって傷んでしまうので、本当は15匹であっても「20匹!」と適当にごまかすことから“さばを読む”という言葉が生まれたらしい。

このように、もともとは数を多くごまかす言葉だったのだが、今ではもっぱら年齢を少なくごまかすことに使われている。数を多くごまかすか少なくごまかすかの違いはあるが、サバもヒトも鮮度を保ちたい、という思いは共通している。


2020年9月

【参考文献】

  • 「サバを読む」の「サバ」の正体 NHKアナウンス室編 新潮文庫