走らんか副社長
【番外編(連載125回)】

自粛中 いつまで自粛なのか海の生き物

20.サメ(鮫 魚類)

JAWSは人を襲って食ったが、栃木県民はそのかたきを討つべく、サメを食べている。いや、ほんとうに栃木のスーパーではサメの肉が売られているのだ。もともとは、サメの肉は日持ちが良いことから、海に接していない栃木県に、茨城・福島・宮城あたりで獲れたサメが貴重な海の魚として流通していたことに始まるらしい。しかし今、栃木の人にサメを食べてますか、と聞くと「いやぁ、あれは・・・」とか「別に、おいしいものじゃないし・・・」と、そんなこと聞かないでくれ的な反応が返ってくる。どうも、これは栃木の食文化の“誇り”というより、どちらかといえば“恥”に近く思われているようだ。

しかし、サメの身を食べるのは、水産資源の有効活用という点ではたいへん有意義なことで、もっと胸を張って良いことだと思う。というのは、サメが捕獲される最大の目的は、そのヒレを加工して中華食材のフカヒレにするためなのだ。ヒレを取ったあとの身は、はんぺんなど練り製品の原料に使われているが、そのまま食材として消費されるにこしたことはない。

というわけで、まずはサメを食べてみよう、と弊社宇都宮工場近くのスーパーで、“もろ”という名で売られているサメの切身(北海道・青森県沖太平洋産、100gあたり138円)を購入した。

おすすめメニューは、煮付け、フライ、唐揚げだそうだが、無難なところで唐揚げにする。しょうがと醤油で下味をつけ、衣をつけて揚げたところ、我ながらなかなかJAWSに、いや上手にできた。かんじんの人生初サメの味だが、まぁ魚を唐揚げにした味であった。付け加えるならば、さめてもおいしかった。さめだけに。

なお、サメの名誉のために書いておくが、あの映画の印象が強すぎて、サメは狂暴で獰猛な生き物というイメージが付いてしまっているが、サメはなにも好き好んで人を襲っているわけではない。大部分の種類のサメは温厚で愛すべき存在なのだ。かわいそうに、狂暴だと誤解された心優しいサメは泣いていることだろう。


21.エイ(魚類)

サメとエイはともに、魚類の中でも軟骨魚類に分類されるたいへん近い存在だ。ここでは紹介しないが、エイみたいなサメや、サメと名前が付いたエイがいる。もともと獲物を求めて泳ぎ回っていたサメのうち、もう疲れたから海底でじっと餌が来るのを待っていよう、と考えた賢いなまけものがエイになったのだろう。

エイは、エイヒレとして食することがほとんどだが、ヒレを食する魚としてはサメ(フカヒレ)、ふぐ(ヒレ酒の材料)、エイ(エイヒレ)が世界三大おいしいヒレとされている(私が決めた)。この三種のうち、エイヒレが他の二つと違っている点を挙げると、フカヒレとヒレ酒は高級料理店でないと味わえないが、エイヒレは大衆居酒屋のメニューにあること。そして、サメとフグのヒレは本体とヒレが明確に区分できるが、エイはどこまでが本体でどこからがヒレなのかの境界がよくわからないことだ。

エイは体が平べったいのが印象的だが、平べったい魚は他に、マンボウやヒラメ・カレイがいる。この、マンボウ、エイ、ヒラメ・カレイ(この二種は左右対称なので一種とみなそう)は、世界三大平べったい魚、略して三平魚と呼ばれている(私が決めた)。

しかし、この三種の平べったい魚は、平べったくなった過程がそれぞれ違うのだ。縦に平べったくなったマンボウ、横に平べったくなったエイ、右に寝返りを打ってから平べったくなったヒラメと左に寝返りを打ってから平べったくなったカレイ、んっ逆かもしれない。まぁいずれにしろ、平たく言うとそういうことだ。

2021年9月