走らんか副社長
【中山道 西行】

83区 熊谷~籠原

熊谷は地名としては“くまがや”と読むが、苗字の場合は“くまがい”と読むのが一般的なようだ。JR熊谷駅前には、この地ゆかりの熊谷直実(くまがいなおざね)が馬に乗った像が鎮座している。と言われても、直実が何を為した人なのか私はよく知らなかった。一字違いのよく似た名前で熊谷真実(まさざねではなく、まみ)さんなら知っているのだけれど。
熊谷直実は、平家物語における平敦盛(たいらのあつもり)との関わりが有名なのだという。そういえば植物の名前にクマガイソウ(熊がいそう、ではない)とアツモリソウがあるのは聞いたことがある。では、平家物語のその部分だけでも読んでみようと、久しぶりに苦労して真面目に古文を読んだ。冒頭部分だけ紹介すると、熊谷直実が敵の武将を捕らえた場面で、その武将(敦盛だが、身分は明かしていない)が思いのほか若かったので、直実は我が子の印象と重なってしまい、斬るのをためらって逃がそうとする。斬るか斬られるかの時代において、斬る側の直実の葛藤と苦悩、斬られる側の敦盛の矜持が描写されている。直実と敦盛の逸話がいかに日本人の琴線に触れたのかは、植物の名前だけでなく、魚にもクマガイウオとアツモリウオという魚がいることからもわかる。

今、熊谷が全国的に有名なのは夏の暑さで、群馬県館林、愛知県多治見などと並んで猛暑日の最高気温を競っている。そういえば館林の会社の社長が「どうせ暑いなら日本一にならないと」と言っていたが、その気持ちはよくわかる。暑くても、それが日本一なら苦痛も少しは報われようかというものだ。民家の壁には、見るからに暑苦しい「あついぞ!熊谷」のキャラクターとともに、熊谷ならではの掲示がある。

熱中症を注意喚起する看板

猛暑日のニュースでは、熊谷で最高気温を掲示した巨大な温度計が報じられるのがおなじみだが、6月初旬の今日はまだ気温20度台で、温度計もまだ設置されていないようだ。今年はこの後設置されるのだろうか。昨年あたりから、暑さをことさらに騒ぐのはいかがなものか、と熊谷市は少し自重気味なのだそうだ。


中山道名物の八木橋デパートを通過する。ここは、ちょうど中山道を塞ぐ位置にデパートが建てられたのだが、デパートが粋な計らいをして中山道の道筋をそのまま店内の通路にしているのだ。デパートの営業時間中のみ通れる街道で、かつては茶店があって団子が売られていたかもしれない場所が、今はやはり菓子売場となって営業されており、ここが中山道という表示まで親切にしてある。写真に人がほとんど写っていないのはたまたまこの瞬間そうだっただけで、お店の名誉のために書くと、ちゃんと賑わっていた。しかし、買い物目的ではなく、私のように単に通過するだけの客も多数いるのだろう。申し訳ない。

八木橋デパート通路

街道沿いにかつては一里ごとに一里塚があって、目印となる木が植えられていた。今は消滅してしまっているものが多いが、大切に残されているものも少なくない。その一つ、日本橋から17里にあたる新島の一里塚に驚く。かつて直立していたであろう幹は雷か暴風雨で折れて切られ、幹にも生気がない。しかし若い枝が育って生きている。木としてのバランスは悪いが、なんという生命力だ。説明によると樹齢300年以上、記録によると榎を植えたとされているが、間違えたのか植え替えたのか、この木は欅だそう。どうかこのまま元気に長生きしてほしいものだ。

新島の一里塚の欅の木

住宅地時々農地という風景の平野を進むのだが、用水路がはり巡らされていて、そこを流れる水がきれいなことと、ひとつひとつにちゃんと名前があることに感心する。荒川から取水したこれらの水路は、玉井堰幹線用水路(柿沼堀)、玉井堰幹線用水路(代掘)、奈良堤幹線用水路などと表示されている。関東平野をずっと走り・歩いていて感じるのは、防災目的であれ農業目的であれ、治水という取り組みが行き届いていることだ。日々の生活ではなかなか意識しないことだが、感謝したい。

玉井堰幹線用水路(柿沼堀)

今(2018年6月)宇都宮餃子を題材にした映画「キスできる餃子」が公開中だ。当社はこの映画に特別協賛企業として関わっており、映画と連動した商品として、餃子の具で作ってみたシリーズ(カレー、スープ、まぜご飯の素)を発売している。

宇都宮餃子会の事務局長から、ガシャポンの中身らしいミニチュア餃子グッズをいただいた。では同じように当社商品のミニチュアも、と思って作ってみた。餃子を焼くべきフライパンの中にいっしょに並べたので、つまようじ(実物)と比較してその大きさを感じていただきたい。

2018年6月

今回の走らんかスポット