走らんか副社長
【中山道 西行】

94区 西松井田~坂本

西松井田駅から出発してまもなく、庭先に停めてある珍しい農耕車両が目についた。後部に付いている大きな扇風機のようなものは何なのだろう。前進しながら後ろに風を送る必要があるのはどんな農作業なのか、想像がつかない。

後ろに気流を噴射して走る車・・・どこかで見たことがある・・・そうだ、映画バックトゥーザフューチャーだ。この車は農耕用などではなく、時空を超えて駆ける乗り物に違いない。これに乗って200年ほど過去に戻り、江戸時代の中山道を歩けたらどんなに楽しいことだろう。


高崎駅を起点とする信越本線は横川駅が終点だ。かつては長野(信濃)新潟(越後)まで通じていたからこその“信越”本線なのだが、新幹線の開通にともなって横川から軽井沢に向かう路線は廃線になり、今は群馬県内で完結する名ばかりの“信越”になっている(長野県、新潟県にも分断されて信越本線は存在しています)。

ここが本来の信越本線だったころ、峠を越える機関車を連結するために列車が停まる横川駅は、駅弁“峠の釜めし”が名物だった。では、横川駅が終着駅になってしまってどうなったか。普通なら長距離鉄道路線の廃止は、駅弁需要消滅、駅弁業者廃業、とつながってもおかしくないところなのだが、この釜めし業者おぎのやさんは生き残っている。観光客にとっての名物であり続けているし、各地の百貨店や量販店で催される駅弁フェアの定番商品でもある。経営環境が激変しても絶滅することなく、立派に事業を継続している稀有な例と言える。

昼食はおぎのやさんに敬意を表して釜めしを(駅弁としてではなく店内で)いただき、先へ進む。


廃線になった線路の跡は遊歩道としてきれいに整備されていて、鉄道遺跡を巡る散策コースになっているのだが、スタート地点にはクマの出没に注意して下さい、との掲示がある。お手軽ではあるが命懸けでもあるコースを、碓井峠のふもとの宿場坂本宿まで進む。


経路上で見かける植物についてなのだが、今回は白い花(葉)の植物が気になった。写真左は、ところどころ葉が白くなっていて遠くからでも目立つ植物。これを見た時には何という植物だかわからなかったのだが、翌日立ち寄った下仁田町の自然史館で、これがマタタビだと知った。どうして葉が白いのか調べてみると、葉緑素がとんでしまったからでも白い色素が出現したからでもなく、葉の内部に空気の層ができて白く見えるのだそうだ。白い歯、いやいや葉は美しいと考えているのかどうか、マタタビは猫を幻惑するだけでなく、人の目も惑わしている。

次はたぶんツユクサ科の植物。ツユクサは青や紫の花が多いが、ここでは珍しく白い花が咲いている。青と白の花が混在しているが、これは別種なのか、単に青色の色素(アントシアニン)が作用しているかいないかの違いなのかは知らない。それはともかく、梅雨の時期から夏にかけて涼しさを感じさせてくれる花だ。

3番目は、杉の木の幹を伝って伸びて一面に白い花をつけているツタ植物。けっこうな高さの杉の木が並んでいるのだが、それをまとめて覆ってしまう勢いのたいへんな生命力だ。ここまでしつこくからまれると、高杉くんもなす術がなさそうだ。

マタタビ

ツユクサ科の植物

ツタ植物

最後に、白い花をつけたソバ畑。後方を横切るのは上信越自動車道、背景は妙義山。

いよいよ碓氷峠が目前に迫ってきた。次はいよいよ中山道最大の難関、峠越えだ。本当に越えるのだろうか。私の体力は年齢的にとうに峠を越えて下る一方だぞ。さてどうなる!走らんか!!

2019年6月

【追記】
冒頭の車は、自宅で農業を営んでいる社員に写真を見せて尋ねたところ、ナシ畑などに薬剤を噴霧するスピードスプレーヤーというもので、タイムマシンではないそうだ。残念・・・。

今回の走らんかスポット