走らんか副社長
【栃木県】

111区(連載148回) 市貝~茂木

「栃木県が大好き」と言ったからには、県内の全市町を踏破しようではないか、と勝手に決めた企画、今回は市貝町から茂木(もてぎ)町へと向かう。
 市貝にある道の駅は、“さしばの里いちかい”という。そういえば、このあたりはとうもろこし畑が多い。とうもろこしをがじがじと前歯でかじっていると、がじがじ・ぼきっ、と歯が折れて差し歯になる人が多いのだろう。
というのは冗談で、道の駅にある説明によると、サシバとはワシやタカの仲間で、冬の間は台湾などの暖かい土地にいて、夏になるとこのあたりに来て暮らす渡り鳥なのだそうだ。

茂木まではほぼ真岡鉄道に沿って進む。実はこの前日に、栃木県の地方紙である下野(しもつけ)新聞を読んでいて、本日から茂木町の図書館にて鉄道写真家N氏の展覧会があり、期間中はN氏がだいたい在館している、という記事を見つけていた。
 そのことを意識して、畑の向こうを走る1両編成の真岡鉄道を撮ってみた。まぁ、なんてことはない写真だ。


途中で通過した茂木の道の駅には、季節ではないのにたくさんの鯉のぼりが泳いでいる、と思ったら、これは鯉ではなく、鮎だった。このあたりの川では鮎釣りができ、観光やな(川魚を獲る仕掛け)もあるので、鮎のぼりでアピールしているのだ。そう思って見ると、釣られてしまった鮎たちが哀れに泳いでいるようにも見える。


真岡鉄道の終点である茂木駅のちょうど裏には、戦争中に掘られた地下壕が残っている。岩盤が崩落して危険だということで今は中に入れないのだが、説明看板の説明をそのまま写す。「この特殊地下壕(軍需工場跡)は太平洋戦争中に東京芝浦電機㈱の茂木工場として、高射砲の砲身を目的に造られた軍需工場の跡地です」。
 そうか、東芝も当時は軍需産業の一翼を担っていたのだな。このコーナーでは長野県松代の地下壕に行ったばかりだし、私の地元柏市にも軍事施設の跡が残っている。


冒頭で書いた道の駅“さしばの里”でヤングコーンを買って帰った。ヤングコーンとは、そういう品種があるのではなく、若い実を収穫した(もしくは間引きした)ものだろう(たぶん)。分解すると、実よりも外側の捨てる部分が圧倒的に多いのだが、そんな文句は言わない。
 ヤングコーンは食べるとほんのり甘くて、でも少し苦みがあって、うんヤングだねぇ、と馬鹿なことを考える。

さて、茂木の図書館で鉄道写真家のN氏にお会いした。NHKの“てつたび”という番組に出ておられるが、撮影された写真はTVの画面で見るのとは圧倒的に違って、失礼ながらさすがプロだと思ったのだった。一方N氏ご本人はというと、TVでは機材を入れた重そうな荷物を背負って汗をかきかき歩いて、陽気に話をされる方だとお見受けしていたが、そのまんまの人でした。

2023年8月

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