走らんか副社長
【中山道 西行】

番外編 小休止 筑波山

碓氷峠越えに挑戦しないまま一ヵ月が経過してしまった。言い訳をすると、今年の梅雨はほんとうに梅雨らしい梅雨で、晴れ間がなかったのだ。慣れない峠越えをするにあたって「雨もけっこう。」「雨天決行!」などという無謀な決断はできないでいた。

そもそも、群馬県側から長野県へ碓氷峠を越えるのはどういうことかというと、前回到達した峠のふもとの坂本宿が標高約400m、そこから約1200mの碓氷峠まで標高差800mの山道を一気に登らなければならないのだ。本格的な登山未経験者の私および同伴者にとっては、ほんとに行くの?というものだ。

待ち受けているのは、山登りのつらさだけではないだろう。蚊が刺す、蜂が飛ぶ、ヒルが吸う、蛇が這う、熊が来る、道に迷う、と不安は尽きない。


ではこの一ヵ月何をしたかというと、まずは装備面の準備だ。登山用品店に行って店員さんのアドバイスを聞き、登山用ポール(杖)と熊よけの鈴(これは必須だと思う)、雨風を防ぐジャケットを購入した。同伴者はさらに登山靴だパンツだ、と本格装備に余念がなかった。

さらに重要なのは体力面の準備だ。いきなり800mの登りは不安なので、その予行演習として手近なところで、茨城県のほぼ真ん中にそびえる筑波山に行くことを計画した。標高約550mの駐車場から877mの筑波山(女体山)までの標高差320mほどの登山だ。本番の半分にも満たない標高差だが、フルマラソンを走る前には最低でもハーフマラソンを走っておくべきだ、という考えと同じだと思えば有意義であるに違いない。


なかなか晴れる日がなくて実行できなかったのだが、やっと晴れた平日、こんな貴重な日には仕事なんかしている場合ではない(働いている社員よ申し訳ない)、と出発する。筑波山といえばガマの油が有名だが、山の斜面に巨大なガマが鎮座しているのを横目に登る。けっこう険しい岩山を登る。

山頂からの眺めは爽快なものだった。準備万端、次回こそは碓氷峠だろう。碓氷峠だ。碓氷峠でなければならない。

2019年7月

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