走らんか副社長
【番外編(連載135回)】

自粛中 刺身だ干物だ海の生き物

38.アジ(鯵)(魚類)

 アジは、いろいろな料理に使われるおなじみの魚だ。刺身や、塩焼きや、干物にして焼いたり、揚げてから南蛮漬けにしたり、アジフライにしたり。それぞれにおいしいが、ここではアジフライについて書こう。アジフライに合う調味料は醤油かソースか、という論争も興味深いが、それを言い出すと、一口にソースと言ってもウスターだ中濃だとんかつだ、いや私はマヨネーズ派だ、だったらタルタルソースにすべきだ、と収拾がつかなくなるので、やめよう。

アジフライの作り方は、頭を落として開いたアジに、小麦粉、溶き卵、パン粉を順にまとわせて熱した油に投入する、というものだ。同じ手順で材料を変えればエビフライ、カキフライ、ホタテ貝柱フライ、白身魚フライもできる。
 今あげた材料はすべて海鮮系だが、これを肉に変えたらどうなるか。まったく同じ手順を踏む料理なのに、チキンカツ、ビーフカツ、ポークカツまたはとんかつとなって、誰もフライと言わないのはなぜだろうか。肉の中ではその食感が比較的魚に近い鶏肉に関しては、K社のフライドチキンに代表されるように、“フライ”を使うこともあるが、その場合は、小麦粉・溶き卵・パン粉の手順ではない。
フライまたはカツにおいて、豚肉が特に優遇されているのは間違いない。なぜなら、カツカレーやカツ丼は(フライカレーやフライ丼でも良いはずなのだが)豚肉を使った料理だ、となぜか暗黙の了解がされている。お店でカツカレーを注文して、アジフライがのっかったカレーが出てきたら、客はまるで自分が豚になったかのようにブーブー文句を言うに違いない。
アジの身になって考えれば、どうせ食べられる運命なら願わくはアジカツと呼ばれたかった。そしてカツカレーやカツ丼の主役になるのが夢だった、と思っているに違いない。

このように、フライ/カツ問題は、海鮮/肉問題でもあるのだが、では、じゃがいもだったらどうだろう。皮をむいて蒸すかゆでるかしたじゃがいもを丸めて、やはり小麦粉・溶き卵・パン粉の手順で揚げると、これはフライでもカツでもなく、コロッケになる。
 また、ポテトコロッケには少量のひき肉を混ぜることも多いが、ひき肉がメインになるとメンチカツとなる。では、ジャガイモとひき肉を同量混ぜた揚げ物は、はたしてコロッケかメンチカツか、という問題が出てくる。コロッカツあるいはメンチッケとでも名付けよう。どこかの外食チェーンで採用していただけないだろうか。


39.カマス(魳)(魚類))

塩焼きや干物がおいしいカマスをよく見ると、しゅんととがった顔はけっこう怖そうだし、少し開いた口からのぞく鋭い歯は今にもかみつきそうにしている。その風貌から、カマスの語源は「一発かますぞ」とか「ぶちかます」からきていると思っていたのだが、どうもそうではないらしい。

 私の義父(故人)は教師であり画家だったのだが、カマスの開きを描いた絵が残っている。では、私も描いて並べてみよう。
う~む、並べること自体が画家に失礼な気がする。

2022年7月