走らんか副社長
【番外編(連載131回)】

自粛中 だしにしてくれ海の生き物

30.カツオ(鰹)(魚類) 31.コンブ(昆布)(藻類)

食品製造業にたずさわる者として、いよいよ満を持してカツオとコンブについて語ろう。えっカツオの妹はワカメでしょ、ってそれは日曜夕方の話で、食や調理に関わっている人なら、かつおだしとこんぶだしによる“うまみの相乗効果”をたぶん知っているだろう。
 

うまみの相乗効果は、炭水化物の相乗効果(ラーメンライスを食べると太る)、お酒の相乗効果(いろんな種類のアルコールを飲むと悪酔いする)とともに食生活の3大相乗効果と呼ばれている。というのはうそで、正しくは、かつお節などに含まれるイノシン酸と、こんぶなどに含まれるグルタミン酸が合わさると、それぞれ単独で使うよりも7~8倍強いうまみを感じる現象のこと。私たちが親しんでいる和食文化には、かつおだしとこんぶだしが深く関わっているのだ。


動物と植物の食材を組み合わせることでうまみの相乗効果を引き出すのは、和食以外でもたとえば洋食では牛肉と玉ねぎ、中華なら鶏肉とネギなどの料理がそれにあたる。しかし、今あげた洋食と中華の例は食材そのものの組み合わせなのに対し、かつおとこんぶの場合はそれぞれを加工したのち煮出した“だし”だけを味わって、食材そのものは食べないことが多いというところが大きく違っている。

食材を乾燥させてから“だし”として使うことを、私たちの祖先はどうやって編み出したのだろうか。こんぶの場合は、海岸に打ち上げられて干からびたこんぶを煮てみたら、汁がおいしくなることに気付いた、というところだろうか。


では、かつお節はどうやって生まれたのだろうか。“煮干し”という言葉があるように、小魚を煮てから干せばおいしいだしになるという知識はあったのだろう。
かつおが1匹手に入ったので刺身にして食べたけれど全部は食べきれなかったからとりあえず煮てから干したらどうにかなるかと思って干したけれど1日じゃとても乾かなくて雨も降りそうだったのでかまどのそばに取り込んでそのまま放置していたら煮炊きする煙でいぶされてどんどん乾燥してそれでもまだまだ放置していたらいつのまにかびっしりとカビが生えてこうなると触るにも勇気がいるのでさらに放置していたらかちんこちんに固くなってこんなものもはや食べ物じゃなくなったと思ったけど捨てるに捨てられずにいたら野良猫が寄ってきてみゃあみゃあないて食べたそうにしているのでほんとに食べるのかとためしに薄く削ってやってみたらがつがつと食いついてうまそうなのでそれなら自分も食べてみようかと恐る恐るかじってみたらこれがまあうまいのうまくないのってうまいじゃあないか猫にだけ食べさせておくのは惜しいよってなわけで人間様も食べるようになりましたとさ。ほんとかなぁ。
カツオは黒潮にのって泳いでいるので、水揚げされるのは鹿児島、高知、静岡などが有名、いっぽうのコンブは北海道が本場。生きて出会うはずのない両者なのだが、宮城県産のカツオも多いので出会うのも間近のようだ

かつおとこんぶの出会い

2022年3月