走らんか副社長
【中山道 西行】

85区 深谷~岡部

JR深谷駅は、何故ここにこんな駅が!と驚く立派な駅舎だ。宮殿かテーマパークを思わせる威容だが、これは、深谷生まれの実業家渋沢栄一(1840~1931)にちなんでいる。渋沢が日本で初めてレンガ製造を工業化した日本煉瓦工業(株)という会社がこの地にあり、東京駅の建造にも深谷のレンガが使われたことから、東京駅に似たこの駅舎が建てられたのだそうだ。

渋沢栄一の評伝を読むと、“日本実業界の父”“近代日本の設計者”“近代日本資本主義の父”といった言葉が並ぶ。約470もの企業の創設に関わり、福祉・医療・教育・外交など多方面にたいへん大きな足跡を残した偉人だ。利益を追求しながらも、道徳観・倫理観をおろそかにしてはならない、と生涯を通じて説いている。世の中には道徳も倫理もぶっ飛んでしまった経営者が絶えないようで、私も自戒しなければ。

渋沢栄一は深谷の血洗島という何ともおどろおどろしい場所で生まれている。血で血を洗う壮絶で残酷な光景を想像してしまうが、地名の由来は諸説あって定まっていないらしい。生家が今も保存されているというので、足を伸ばして行ってみる。案内ボランティアの男性が「10分間で短く説明しましょう」と言って案内していただいた。渋沢家はこの地域の豪農だったそうで、立派なお屋敷は一階が住居、二階では養蚕を営むつくりになっている。

幼少のころからカイコに囲まれて育ったことが、人はカイコを飼っても人をカイコしてはならない、という経営哲学につながったのだ。(うそです)


中宿古代倉庫群跡には奈良時代の校倉造りの倉庫が復元されており、その前には古代のハスが夏空に向かって花を咲かせている。元気いっぱいの大きい蓮の葉だなぁ。はすのは・・・、はすっぱ・・・。

まさかと思って調べてみたら、なんとそのまさかで、“はすっぱ”の語源は蓮の葉だそうだ。お盆の前に蓮の葉を売る商売は、ほんの一時期だけのいいかげんな仕事なので、そこから転じて、軽薄で上品でない女性を指して言う“はすっぱ”が生じたのだという。どうも納得しかねますね。蓮の葉を売るのはけっして悪いことではないので職業差別だとか、極楽浄土にもたくさん生育している(らしい)蓮に対する侮辱だ、とか。しかし“はすっぱ”が悪い言葉だという前提だからそんな批判を思いつくわけで、考え方を変えてみよう。「僕は少々はすっぱな女性が好きだな」なんて、はすに構えてみたらどうだろう。(この場合の“はす”は斜めという意味です。)


関東は白ネギ九州は青ネギ、と前回書いたがその続き。私は、ざるそばの黒っぽいつゆには九州でも白ネギを使うものだと思い込んでいたのだが、九州の社員に聞くとざるそばの薬味も青ネギ、という答えが多かった。

実際にはどうなのだろうか、そば屋をはしごして確認するのはたいへんなので、コンビニの惣菜売場で売っているざるそばを調査してみた。佐賀県唐津市のコンビニS、L、Fで売っているざるそばの薬味を見たところ、Sは青白混合、LとFは青、よって青の2勝1分けであった。千葉県で同じくS、L、Fを確認した結果はすべて白中心(青い部分も少々混じる)であり違いは明らかだ。青ネギ対白ネギの文化の違いは、白い根深ネギと同じくらい根深い。


深谷に行った記念に深谷ネギを買ってきた。すき焼に限っては、使うのは全国的に太い白ネギだろう。今夜はこの秋発売の弊社新商品“とっておきのすき焼わりした”で食べよう。美味しそうな深谷ネギが主役だ。ついでに、深谷市のゆるキャラ“ふっかちゃん”のコップ酒も飲もう。

主役がネギで、牛肉はないのか!?

2018年9月

【参考文献】

  • 渋沢栄一 井上潤著 山川出版社
  • 現代語訳論語と算盤 渋沢栄一著 守屋淳訳
  • 今回の走らんかスポット