走らんか副社長
【番外編(連載130回)】

自粛中 どうにかしてくれ海の生き物

28.ワカサギ(公魚)(魚類)

ワカサギは、凍った湖の上で釣り人が氷に穴をあけて針を下ろしているイメージがある。あんな寒い中で釣りをするとはよほど好きなのだなとか、魚は魚で、寒い中でよく針に食いつくなぁと思うのだが、あの釣りの良いところは、釣った魚はその辺に放っておけばすぐに冷凍されるので、保存が容易ということだろう。

そんなワカサギは、湖だけではなく海水が混じった汽水域にもいるそうなので、広い意味で海の生き物とさせていただこう。関東地方では、茨城県の霞ケ浦でワカサギ漁が行われている。先日、茨城県の特産物には何があるか探ろうと茨城県内の道の駅に寄ったのだが、そこではワカサギの唐揚げや佃煮が数多く売られていた。その中で“ワカサギのかりんとうブラックペッパー味”という商品にひかれて買ってきたのだが、説明書きにはワカサギを唐揚げにしてから砂糖をまぶし、ブラックペッパーで風味を付けた、とある。さてどんな味なのかと食べてみると、ワカサギを唐揚げにしてから砂糖をまぶし、ブラックペッパーで風味を付けた味だった。そのまんまだ。

ワカサギを唐揚げにするにあたっては、この小さな魚をどれだけ“からっと”しかも揚げ過ぎないで仕上げるかが腕の見せ所だ。衣をつけてから熱した油に投入し、最初はじゅぼぼぼぼぼと出ていた泡が、しゅわしゅわっソーダ水~、のように小さな泡がはじけてきたら出来上がり。つまようじ半分の長さほどしかないワカサギもちゃんとおいしそうに揚がったぞ。なかなかかわいいではないか。

話は飛ぶが、終戦の日に政治家が靖国神社に参拝すると、「参拝は公人としてか、私人としてか」と問う人がいる。もし、人には公人と私人という立場の違いがあり、魚の世界にも公魚と私魚という区分があるとすれば、ワカサギは間違いなく前者だ。なにせ、ワカサギは漢字で書くと公魚なのだから。日々公の立場でのみ生活していて私的な行動が許されず、堅苦しくて肩がこる(肩はないけど)、とワカサギは嘆いていることだろう。(なぜ公魚と書くのかという理由は、江戸時代に徳川家に献上されていたから、らしい)

それにしても、なぜワカサギという名前なのだろうか。まさか、昔の人は鳥のサギ(鷺)が若いころはこの魚だったと信じていたわけでもあるまい。調べてみると、多くのワカサギの寿命は1年以内なのだそうで、つまり年老いたのはおらず、みんな若い。だからワカサギだ、という決め方も乱暴すぎていかがなものかと思う。

 ワカサギは若いだけでなく小さいのだが、だからといってコサギと呼ぶとなると、それは鳥だ。写真は会社の近くに飛んできたコサギを弊社のツイッター氏が撮ったもの。コサギがやってくるのはよいが、最近はいろいろなトクシュサギが日本中で繁殖して人に接近しているようなので、特に高齢者の皆さん(なんと私も仲間入り!)は注意しよう。


29.のり(海苔)(藻類)

最近は海苔が不作なのだそうだ。東京湾ではクロダイが海苔を食べている実態が明らかになっているが、これはせっかく育った海苔が食べられているわけで、不作とはちょっと違う。瀬戸内海で海苔が不作な理由は、下水道が普及して生活排水が浄化された結果、海苔の成長に必要な栄養分が足りなくなったため、と報じられている。下水道が普及したから、というのは皮肉な理由だが、一方で海に豊かさをもたらす森林が、戦後に植林された杉が手入れされずに放置されて、ひょろひょろの杉林になっていることも原因のひとつだ。私も山に入った時に感じるのは、自然林と人工的な杉林では肌で感じる自然がまったく違うことだ。豊かな海は豊かな森から、と山を多様な樹木が茂る森に戻す取組みが各地で始まっているが、これは5年や10年で目に見える成果が出るものではない。単にきれいな海ではなく、豊かな海が必要なのだ、と海苔が教えてくれている。

弊社には海苔業界から転職して入ってきた営業員がいるので、海苔の不作について彼と言葉を交わした後で私はこんな話をした。
「海苔も人も同じだと思う、あまりに環境が良すぎると人材は育たないのではないか。企業は多少ブラックな方が人は育つと思う。」すると彼は即座に「副社長!それは違います!!」と否定してきた。
その通り、ブラックという言葉を出したのは冗談としても不適切だった。ただ、私が思っているのは、のりも育たない環境よりも、のりのりで社員が働く職場であってほしいということだ。

のりのりののりたち

2022年2月