走らんか副社長
【番外編(連載124回)】

自粛中 なかなか終わらない海の生き物

18.エビ(海老) 甲殻類

「みなさ~ん、エビの体には血液が流れているのですよ。では、エビの血液型は何型でしょう」
「エービー型!」
「その通り!では大型のエビ、イセエビは何型でしょう」
「オー型!!」
「そうです!!よくできました」

いきなり、くだらない話から始めてしまったが、皆さんはエビの体内に血液が流れている、ということに疑問を感じないだろうか。我々は“血は赤い”と思い込んでいるが、たとえば有頭エビを買ってきて、“ごきっ、ぶちっ”と頭をむしり取り、“ばりっ、べりっ”と殻をはぐ少々残酷な作業をしても、台所が流血の惨状に染まることはない。それは、エビの血液(体液)が赤くないからだ。無脊椎動物には毛細血管が無く、血液のような、でも体液のような液体が体内の組織の間を流れていて、我々が常識的に血と考えているような赤い液体がないのだ。

そうすると、血液とは何だという話に発展するのだが、酸素を運ぶ役割のヘモグロビンを含む液体があればそれは血液のようなものだ、と解釈を広げると、プランクトンにだって血液があることになる。ヘモグロビンが体内に増えたプランクトンが大量に発生して、海を赤く染める現象が赤潮だ。

ところで、映画の世界でゴジラなどの怪獣や、エイリアンなどの化け物が流す血は、なんだか黄色っぽくて、ちょっと緑色がかっていることが多い。見たところどろどろで、血液サラサラではない。闘う前に健康診断を受けたらひっかかると思う。

話をエビに戻そう。私たちが食べている小エビは東南アジアからの輸入ものが多い。スーパーに行くと冷蔵や冷凍のむきえびが売られているが、小エビはこうして家庭用に販売されているよりも、加工食品向けに使われるもののほうが圧倒的に多いようだ。小エビを大量に輸入している食品会社を2社あげると、まずカップ麵のN社、もう1社は冷凍のエビシュウマイやエビピラフを製造しているA社だ。

両社とも年間に何万匹、いや何百万匹、いやいやもっと大量のエビを使っているかもしれない。感心するのは、こんな小さなエビでも頭と殻がちゃんと処理されていることだ。現地の人が“ごきっ、ぶちっ、ばりっ、べりっ”と手作業でやっているのだろうか、それとも機械を使ってできるのか、知りたいところだ。


19.シオマネキ(潮招き) 甲殻類

カニについては以前、カニ味噌はなぜ少ないかについて書いたが、今回はカニの一種、シオマネキについてだ。シオマネキは片方のハサミだけが大きく、大きい方のハサミを振り動かす。その動作が潮を招いているように見えることから、“潮招き”という和名がつけられている。英名ではfiddler crab(ヴァイオリンを弾く蟹)といって、ハサミを動かす様子をヴァイオリン弾きに見立てている。fiddlerとはヴァイオリン弾きのことなのだが、ヴァイオリンを弾くのはviolinistじゃないの、と思われるかもしれない。両者の違いを簡単に説明すると、コンサートホールで正装して演奏しているのがviolinistで、酒場で陽気に楽器をかき鳴らしているのがfiddler、と私は解釈している。屋根の上のヴァイオリン弾きというミュージカルがあったが、英語の原題はFiddler on the roofだった。
 実は何を隠そう、いや別に隠しているわけではないのだが、私はヴァイオリン弾きだったのだ。今はすっかりご無沙汰なのであえて過去形で書いたが、久しぶりに楽器を手にシオマネキポーズをとってみた。カニの動作は“潮招き”か“ヴァイオリン弾き”か、どちらに見えるだろうか。
 そんなことより、シャツが・・・、と言われそうだ。

2021年8月